リアル獄中記「ムショ活」

受刑者ブロガーJ。1993年生まれ、26歳。2019年2月に詐欺容疑で逮捕され、上野警察署から東京拘置所に移送された後、2020年2月に懲役の実刑判決を受け、現在福井刑務所に服役中。厳しい発信制限の中、娑婆に居る協力者の手を借り、獄中記ブログ「ムショ活」を毎日更新。

塀の中からご挨拶

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日常とはかけ離れた世界で生きる人々がいる。僕もその世界で生きる1人だ。

僕は今、東京拘置所に収容されている。決められた時間に起き、決められた時間に寝る。お風呂も運動も髪型も着れる服も掛ける毛布の枚数もご飯の時間も、何もかもに決まりがありその上で生活している。

軍人の生活も似た様なものだろう。そう思うと何故だか心が軽くなる。もしかしたら少しでも自分と一般社会で生きる人を重ね合わせたいのかもしれない。そもそも何故この様な場所で生活するようになったのか…

 

2019年2月、平成最後の年に僕は捕まった。

詐欺事件に関わった人物として警察に逮捕された。“青天の霹靂”それまで普通の社会で暮らし、税金も納めてきた僕が一瞬にして犯罪者の仲間入りをした瞬間だ。そうなったのには本当に色んな理由があるけれど、どんなプロセスだろうが罪を犯した事実は変わらない。自らが選んだ道に言い訳するつもりもないし、目を背けるつもりもない。

それからは上野警察署の留置所に勾留され、そこで取調べを受ける日々は実に8ヶ月も続いた。文字通り何もない囲いの中に、あらゆる罪を犯した者達が老若国籍問わずぶち込まれ、殺されない程度にただ生かされているあの日々は生涯忘れる事はないだろう。いつ光が差すのか分からない闇の中ほど恐いものはない。原因不明の病気に顔がただれ、心身共に衰弱していくのがはっきりと分かる。一日一日体の内側からジリジリと削られて行くような、あの感覚は自業自得とは言え二度と味わいたくない。唯一の心の支えとなる友人や知人との面会や手紙のやり取りを禁止されていた事も、不安を膨らます原因だったのかもしれない。そんな事実に負けるもんかと、頭の中で偉人と呼ばれる人達の言葉を反復し、沢山の本を読んで色んなエッセンスを吸収しながら、ひたすら自分と闘い続けた。歴史に名を残した人達の言葉は重い。きっと僕なんかよりよっぽど過酷な状況を生き抜いてきたのだろう。ああいう限界状況の中では先人達の言葉が異様に心に染みたのを覚えてる。

しかし明けない夜はないとは良く言ったもので、ようやく取調べも終了し、ここ東京拘置所に移送されて気付けば三ヶ月が経った。

未だ刑は確定してないが、担当してくれている弁護士からは5年〜10年は外に出られないだろうと言われている。全く現実味のない未来に少しも想像が膨らまない。

僕はとても不器用だ。「はい」と首を縦に振れれば受け入れられるのだろう。「できない」と素直に言えれば楽になるのだろう。分かっていてもそれが出来なかったのは、自分を失ってしまいそうで怖かったからなのかもしれない。こんな捻くれた性格を持ち合わせてしまった事で、これまで沢山の人を傷つけたし今回も多くの人を傷つけてしまった。受け入れられなかった事も幾度となくあったし、そんな自分にほとほと嫌気が差し自己評価が著しく低下した事も何度もある。それでも僕がこうしていられるのは、会えば一瞬でストレスなど吹き飛び、下らない話で何時間でも話せる仲間が僕を僕として受け入れてくれる仲間達が居るからだ。そんな仲間達に支えられながら、これから先も道なき道を突き進み、新たな道を切り拓いて行く。これから僕にどんな刑が下され、どこの刑務所に移送され、どんな仕事に就くことになるか。例えどんな困難があろうと常に前を向いて生きて行きたい。何者でもない僕が、ほんの少し歯車が狂った事で犯罪者になり、これから刑務所という別世界で人一倍自由を制限されながらも、淡々と生きて行く様をここに書き続けて行こうと思う。僕の事を全く知らなくても、刑務所ならではの不自由さと意外と与えられている自由さを知って驚く事があるかも知れないし、僕がそこでどのように過ごすのか。不自由に苦しみながらなのか、案外適応出来るのか、そんな姿も楽しんで頂けると思う。人の心を動かす様な事を言える自信はあまりないが、この日記を見てくれた人が、良くも悪くも心に引っかかり、何かを考えるキッカケになってくれれば嬉しいし、そんな淡い望みも抱いている。

僕は「百折不撓」(ひゃくせつふとう)という言葉が好きだ。何度失敗しても信念を貫くという言葉は僕の人生そのものだ。

学もなければ文章力もない、持たざる者の僕が綴る拙ない獄中記を、どうぞ宜しくお願い致します。


2020年 新春 東京拘置所 独居房にて  J