リアル獄中記「ムショ活」

受刑者ブロガーJ。1993年生まれ、26歳。2019年2月に詐欺容疑で逮捕され、上野警察署から東京拘置所に移送された後、2020年2月に懲役の実刑判決を受け、現在福井刑務所に服役中。厳しい発信制限の中、娑婆に居る協力者の手を借り、獄中記ブログ「ムショ活」を毎日更新。

3/14(土曜)〜進撃の巨人を読んでⅠ〜

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進撃の巨人」20巻〜30巻を読んだ。

この漫画は、読む前に想像していたただの巨人の物語などではなかった。人間を食す実体の分からない巨人から逃げ、巨人が進入する事ができない高い壁に囲まれた塀の中で生活を送る人々がいた。何十年も幸せな日々を送っていたのだが、ある日突然今まで見た事もない大きさの超大型巨人が現れ、巨人の進入を阻止していた壁を破壊されて、それまでの平和な日常が奪われてしまう。まだ子供だった主人公のエレンは、自分の目の前で巨人に母親を食べられて復讐に燃える。巨人の実体を調査する調査団に入り、平和をとり戻す為巨人を駆逐する物語だったはずなのに、気付いたら全く予想もしていない展開になっていた。今までとても長い間閉ざされた世界で生きていた事で、全く知る事の出来なかった塀の外の世界で起きていた事、巨人の実体、それらを目の当たりにして、自分が目指す所とは、正義とは、何を信じて生きていけば良いのか。めまぐるしく複雑に変化していく状況に脳みそが混乱した。人は、それぞれの生きる世界で正義を掲げて生きている。しかし必ずしもそれが他の世界と同じ物だとは限らない。沢山の人達が愛する人の為にと思って、それが正義だと思って取った行動が、なぜ人々を傷つける事になってしまうのか。果たしてその行動は本当に正義なのか。そもそもその正義は“誰”の正義なのか。思い込みは幼い頃から当たり前のように教えられた事でそれが“真実”だと思ってしまう事から始まる。悪魔だと教えられた人々を滅ぼす為に、命を懸けて忠誠を違い、訓練に励み、多くの悪魔を殺したはずだったのに、悪魔と呼ばれる人々の世界が垣間見えた時、そこには悪魔などの存在は全くなく、ただ“人”が居ただけだった。天国に導かれていると思っていた者は、知らない内に地獄に足を踏み入れてしまっていたのだ。大切な人達を守る為に命をかけて闘う姿はとても美しいけれど、それが正しくない行動だと知った時の絶望は、とてもじゃないけど耐えられる気がしない。世界を知るという事は、時にとても残酷な結果をもたらす。広大な世界の情報に触れた事で、今まで1つの目標、信念を共有していた仲間達の思考が少しずつ変化していく。つい昨日まで同じ山の頂上を目指していたはずの者が、今日は別の山を登っているのだ。人の考えは千差万別で、得た物の数だけ道ができ、その都度どの道を行くのか選択しなければならない。(続く…)