それぞれが己の信念に忠実に選ぶのだから仕方のないことなのだけれど、情熱を分かちあった仲間が、友が、自分の心の中から遠く薄れてしまうのはなんとも言えない悲しさがある。今日は仲間で明日は敵で、もはや敵が何者か分からないほどの人の移り変わりに自分の心がついていけなくなった。一体誰を信じれば良いのだろう。情報を持った悪党という強者と、何も知らされない無知による哀れな弱者の構図は、なんだかリアルな社会に似ているなぁ。そう思った。一寸先は光でも闇でもある。そして人間は実に愚かな生き物だ。知らない内に悪に加担してしまっている者もいれば、その事すら気付かないまま死んでしまう者もいる。人間1人が出来る事には限界があって、どんな真実も群れた人の中に入ればそれが偽りになってしまう事もある。「なんで皆気付かないんだよ!」「そいつに騙されてるだけだよ!」と人の心をうまく操る悪党を見て気分が悪くなるたびに、自分のやってしまった愚かな行動を思い出し、胸が病んだ。人が生きる世界は、辛いことの方が多いのかもしれない。醜悪さの極致のような人も沢山いる。だけどそんな中にも必ず強い光を放ち続けている人が立っていて、そしてその人達はとても強く、凛々しく、カッコ良いのだ。人は必ず失敗する。それでも夢を見て、ボロボロにされて、また夢を見る。進撃の巨人の中の人達は、とても残酷だったけど、とても美しかった。人より多く深く傷ついた人は、人よりキレイでたくましい。巨人を使った斬新なアイデアによって世界のあり方、社会の葛藤、人の人生を照らし出してくれる「進撃の巨人」には、漫画本来の意義があった。幼い頃、漫画ばかり読んでと度々嫌な顔をしていた大人達に、漫画から得られる物の大きさを教えてあげたい。